2019.01.09 Wednesday
3552 ドナルド・ジャッド「無題 No.306」について
JUGEMテーマ:美術鑑賞
5回目は、ドナルド・ジャッド「無題 No.306」について。
ドナルド・ジャッド
無題 No.306
1973年
コールド・ロールド・スチール
各23.0×101.6×78.7cm(10点組)
ちょうどオフィスデスク程度のサイズで、
厚みが23cmのスチールの中空の箱が10個、
等間隔で縦に1列、壁に取り付けられています。
何かの設備のように見えますが、
機能を持たないファインアートです。
絵画ではないので立体作品と呼びたいのですが、
そう呼ぶことが、ためらわれるのは、
この作品が何かを模倣したり、暗示、象徴したり、
作家の感情や思想が入ったりすることなく、
何も発せず、語らず、
じっと見ていても、何も受け取れないという、
作品の前での居心地の悪さというか、
場の持てなさ、があるからです。
では、ストイックで厳格な美を体現しているのでしょうか。
これは受け手の感性の問題ですが、
筆者には物量的、素材的迫力は感じられても、
美しさは感じられません。
例えばこれは、
建築家のデヴィッド・チッパーフィールドがデザインした
ローテーブルですが、
エッジの効いたシャープなフォルムなら、
自動的に美しくなるわけではなく、
ドナルド・ジャッド
無題 No.306
1973年
コールド・ロールド・スチール
各23.0×101.6×78.7cm(10点組)
ちょうどオフィスデスク程度のサイズで、
厚みが23cmのスチールの中空の箱が10個、
等間隔で縦に1列、壁に取り付けられています。
何かの設備のように見えますが、
機能を持たないファインアートです。
絵画ではないので立体作品と呼びたいのですが、
そう呼ぶことが、ためらわれるのは、
この作品が何かを模倣したり、暗示、象徴したり、
作家の感情や思想が入ったりすることなく、
何も発せず、語らず、
じっと見ていても、何も受け取れないという、
作品の前での居心地の悪さというか、
場の持てなさ、があるからです。
では、ストイックで厳格な美を体現しているのでしょうか。
これは受け手の感性の問題ですが、
筆者には物量的、素材的迫力は感じられても、
美しさは感じられません。
例えばこれは、
建築家のデヴィッド・チッパーフィールドがデザインした
ローテーブルですが、
エッジの効いたシャープなフォルムなら、
自動的に美しくなるわけではなく、
このような、美しさに至る、
かなり厳しく細かい手続きが必要になります。
美しさでもなく再現でもないならば、
ドナルド・ジャッドは何を目指したのでしょうか。
ミニマル・アートを文字通り捉えるならば、
箱は10個ではなく、1個の方がミニマルで、
4面で構成される「箱」よりも、
1面の「板」の方がもっとミニマルでしょう。
厚みが極力薄い板による箱を、
10個縦に並べるという意思だけが、
絵画でも彫刻でもない、この事態に導きました。
制作主題やモチベーションなど、
製作者の影を消し去った
ファインアート(制作を目的とした制作物)が存在するならば、
真の自由なイリュージョンを起こし得るのだろう。
そんな印象でした。
美しさでもなく再現でもないならば、
ドナルド・ジャッドは何を目指したのでしょうか。
ミニマル・アートを文字通り捉えるならば、
箱は10個ではなく、1個の方がミニマルで、
4面で構成される「箱」よりも、
1面の「板」の方がもっとミニマルでしょう。
厚みが極力薄い板による箱を、
10個縦に並べるという意思だけが、
絵画でも彫刻でもない、この事態に導きました。
制作主題やモチベーションなど、
製作者の影を消し去った
ファインアート(制作を目的とした制作物)が存在するならば、
真の自由なイリュージョンを起こし得るのだろう。
そんな印象でした。