2019.01.12 Saturday
3555 ルチオ・フォンタナ「空間概念 期待」について
JUGEMテーマ:美術鑑賞
8回目は、ルチオ・フォンタナ「空間概念 期待」について。
ルチオ・フォンタナ
空間概念 期待
油彩/キャンヴァス
115.5cm×89cm
1961年
大原美術館蔵
赤く塗り込めたキャンヴァスに、
緩やかな曲線をえがく3本の鋭い切れ目が
入れられています。
文字化するとこれだけなのですが、
かなり不可思議な事態です。
絵画は平面上に立体的イリュージョンを起こす手わざなので、
「緩やかな曲線をえがく3本の鋭い切れ目が入れられている」
状態は、筆と絵具で表現すべきなのです。
「カッターで切られているように見えるけど、
近付けば、絵だったんだ」
といった意外性のある体験を提供すべきなのです。
逆に、いきなり実際に切ってしまう行為は、
絵画ではなく、立体制作の発想です。
それならば、素材は赤く塗ったキャンバスではなく、
布や紙を相手にするべきでしょう。
ですから、ルチオ・フォンタナが
制作の基材を、
単色で塗るという絵画的行為を施した
キャンバスに限ったことは重要な判断です。
絵画という前提を崩さないまま、
イリュージョンではない彫刻的な空間性を併せ持つという、
次元の追加を試みたのでは。
そんな印象でした。