2017.08.25 Friday
2735 ギャラリー椿(中央区京橋3-3):HTコレクション 80-90年代の日本現代美術展・4
JUGEMテーマ:美術鑑賞
ギャラリー椿(中央区京橋3-3)では、
HTコレクション 80-90年代の日本現代美術展。
「HT」は、
1980〜1990年代にかけて同時代の日本の現代美術家の作品を
集中的にコレクションしていたコレクターのイニシャルです。
この時代の日本現代美術作品を、
これだけまとまった形で鑑賞できるのは
実に貴重な機会です。
これらの作家の作品は、
主要な美術館のパブリックコレクションになっていてますので、
遠距離にある美術館をはしごする労力と時間、金額を考えれば、
この企画のありがたさが身に沁みます。
折角なので、何回かに分けてじっくり紹介してゆきます。
そして、今回は4回目。
1960年代末〜70年代に、
日本美術界を席巻したアートムーブメント『もの派』作家が続々と登場。
関根伸夫は1968年
円形の穴を掘り、その土をベニヤで作った円柱に移して固めました。
結果、大きな土の円柱と、
その脇にそれと同じ大きさの円柱形の穴のセットができます。
地球の中味をひっぱり出すこの作業を続ければ、
地球は卵の殻の状態になり、
さらに掴み出すと地球は反転しネガの状態になってしまうという、
壮大すぎる、〈位相−大地〉という作品が
「もの派」誕生のきっかけとなったといわれます。
今回展示されている「位相」を主題とした作品も、
その同一画面内のネガボジの関係から、
形というものは様々な局面の一つの刹那に過ぎない、
というメッセージが感じられました。
G10-26 雨雲
位相絵画
関根伸夫
G8-27 日・月
位相絵画
関根伸夫
タイトル不明
石
関根伸夫
若林奮(わかばやし・いさむ )にとって、
文明社会における自然とは、人工物の産物で、
それを正確に表現するためには、
表層ではなく、中から見た形として表現する必要があったようです。
LIVRE OBJET
鉄、鉛、紙
1971
若林奮
若林奮・吉増剛造合作作品「結界−鉄 の」
鉄、銅、和紙
1984
若林奮
アクリルケースに入っている本のような作品ですが、
これは本を高温で焼成した作品(残骸)で、
※泥を塗って焼成することもある。
実際の本を素材とした、
それを「焼く」ことで変容させる創作行為(アート)なのです。
作品は、白くなり「ちじれ」ながらも、
本であることの原型を留めているので、
鑑賞の前提に一旦「本」が置かれ、
「変わった」理由や方法が興味の対象となる。
そんな印象でした。
タイトル不明
ミクストメディア
西村陽平
立派な木製の椅子ですが、
一部は大理石の塊で、片方だけの翼が付いています。
椅子は完全に仕上げられていなく、
さらに座面に林檎が置かれています。
様々に重ねられた寓意性が潜み、
その解釈は鑑賞者分あるのでしょう。
筆者は椅子の持つ属性の特殊性に注目したいところです。
不在の「人」が意識されるアイテム。
帽子、靴やマフラーなど、身に着けるもの。
読みかけの本や、飲み残しのあるコップなど、
行為を予想されるもの。
それらと、椅子の共通性と差異。
その差異の部分が、付属物で増幅されているようです。
タイトル不明
木、陶、石
深井隆
写真:筆者撮影
20170822 鑑賞