2019.01.14 Monday
3557 フランシス・ベーコン「ベラスケスによるインノケンティウス10世の肖像画後の習作」について
JUGEMテーマ:美術鑑賞
11回目は、 フランシス・ベーコン
「ベラスケスによるインノケンティウス10世の肖像画後の習作」について。
フランシス・ベーコン
ベラスケスによるインノケンティウス10世の肖像画後の習作
1953年
油彩・キャンバス
153 cm x 118 cm
デモイン・アートセンター
オリジナルの作品
ディエゴ・ベラスケス
教皇インノケンティウス10世
1650年
油彩・キャンヴァス
140cm×120cm
ドーリア・パンフィーリ美術館
フランシス・ベーコンが興味深い制作をしてくれたので、
具象画がある高みに達した後に、
なぜ、抽象画が必要とされ、生まれたのか、
理解できる気がします。
ベラスケスの画力は、
モデルの姿形の奥に潜む、
老いた権力者の冷たい狡猾さをあらわにしています。
このように、天才画家にかかれば、
遠慮のない鋭い人間観察の結果は、
文字表現を凌駕することになります。
この、ベーコンが制作したベラスケス・シリーズの中の1つでは、
教皇の口が開き、叫び声を上げています。
カーテンを思わせる垂直方向の縦線には、
切羽詰まったスピードある衝動があり、
この状況の逃げられない絶望感を示しています。
椅子のフレームの黄色い直線は、
逃げられない状況の暗示でしょうか。
優れた具象画はモチーフの深部までをも描き出し、
優れた抽象画は、
観る者の知覚を揺さぶる。
そんな印象でした。