2019.06.15 Saturday
3783 ギャルリー東京ユマニテ(中央区京橋3-5-3):飯嶋桃代展
JUGEMテーマ:美術鑑賞
ギャルリー東京ユマニテ(中央区京橋3-5-3)では、飯嶋桃代展。
会場風景。
展覧会タイトルは、
ー〈疾患〉と〈治癒〉通過儀礼としてのイナバノシロウサギ説話ー。
アート(美術)の「きっかけ」になるのは、
色形を持つ実態や、自身のイメージだけではなく、
物語のような内面に働きかける「出来事」の場合もあります。
物語の内容を正確に絵解き(解説)するのが
アートのモチベーションではなく、
作家自身が受けた衝撃の視覚化ですから、
それを追体験する観る側は、
作家自身が受けた衝撃の反射を浴びることになります。
作家は、この飯嶋はこのインスタレーションで、
痛み〜治癒〜変化をともなう再生を記号化し、
この過程の普遍化を試みているようです。
観る側が知識として持ち合わせていた
オリジナルの物語の理解は溶解し、
※今回は「因幡の白兎」。
ちょうど干潮時に海の中から道が現れるように、
別の意味が鮮明になる。
そんな印象でした。
会場は「因幡の白兎」の進行に合わせて3区画されています。
最初の区画では、
鰐鮫を騙した兎が鰐鮫に剥かれた皮が放置されています。
※この古本は、
明治期に刊行された欧米向けの翻訳本。
「THE HARE OF INABA」
次の区画では、
塩と水で、
八十神たちに海に浸かって風で乾かすとよいと騙され、
前よりもっと痛くなった後、
大国主命からすぐに真水で体を洗うよう言われた
場面が暗示されます。
次の区画では、
「蒲の穂の粉を敷いて、その上に寝ころべば、毛が生える。」
という助言。
蒲黄(ほおう)の傷薬としての効果の薬学的根拠が示されます。
世界で発見された類話。
普遍性が潜んでいるようです。
最後の区画。
毛をむしられた兎に
毛も生えて身体は元通りになります。
写真:筆者撮影
20190611 鑑賞