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紋谷幹男が画廊巡りの印象を綴っていきます。
3861 国立新美術館(港区六本木7-22):クリスチャン・ボルタンスキー展
0

    JUGEMテーマ:美術鑑賞


    DSC02239.JPG

    国立新美術館(港区六本木7-22)では、
    クリスチャン・ボルタンスキー展。
    展覧会タイトルは、ーLifetimeー。

    インスタレーションという表現方法の目的は、
    展示されたオブジェの姿形の鑑賞ではなく、
    オブジェが置かれた空間の体験ですので、
    一般的なギャラリーとは規模が桁違いに大きな
    六本木新国立美術館では、
    その表現方法やバリエーションや
    その効果としてのインパクトに、
    大きな優位性、可能性があります。

    今回のクリスチャン・ボルタンスキー展においても、
    六本木新国立美術館の

    空間の大きさや、サイズのバリエーションが
    充分に生かされた、
    ズシンと効く鑑賞体験ができました。

    平日の早い時間に行ったものの、
    (筆者を含めた)鑑賞者は多く、
    ざわついた会場で、
    静かに空間に身を委ねることが望むべくもないのは、
    展覧会のクオリティーと正比例する現象として、
    諦めざるを得ません。

    写真撮影可能エリアに指定されていた作品について、
    以下の印象記です。

    DSC02240.JPG

    DSC02243.JPG

    DSC02241.JPG

    幽霊の廊下
    左右に大きなカーテンが吊るされた通路。
    カーテンには影絵のような人形が投影され、
    送風機による波のような動きが視覚効果を高めます。
    在るのに、見えないものの予感。

    DSC02255.JPG

    DSC02246.JPG

    DSC02252.JPG

    ぼた山
    大量の黒い服が積み上げられた山です。
    「山」のボリュームだけが強く認識され、
    構成単位の黒い服には意識が届きません。
    黒い服にはそれぞれを着ていた特定の人がいたはずですが、
    記憶や痕跡は消え失せ、
    山という塊は何も語りません。

    DSC02250.JPG

    スピリット
    100枚を超える、ポートレイトがプリントされた布の配列。
    生きてきた記憶の多くが、
    人との出会いに関わるものならば、
    天井に群れる人々は作家の記憶世界そのものです。
    消える前の残像。

    DSC02247.JPG

    DSC02248.JPG

    DSC02249.JPG

    アニミタス(白)
    映像が流れる大きなスクリーン前の床に、
    シルクペーパーの玉が敷き詰められています。
    ベンチに座って眺めていると、
    メッセージのやり取りというより、
    知らない物語の一画に紛れ込んだようでした。

    DSC02253.JPG

    発言する
    ランプで照らされたコートが、
    死に関わる何かを語っています。
    コートという抜け殻は、
    実は、生きていた人の代言をしているのかもしれません。

    DSC02256.JPG

    DSC02257.JPG

    ミステリオス
    南米のパタゴニアで撮影された3つの映像。
    作家はラッパ状のオブジェで、
    クジラからの反応を期待します。
    映像は現象の二次元上の再現ですが、
    この画面の奥に、
    ラッパに反応している何かの存在が感じられます。

    DSC02258.JPG

    DSC02259.JPG

    白いモニュメント、来世
    群れ立つ白い角柱は都市の心象風景でしょうか。
    LEDの表意文字はそれだけで明確な意味を
    表現してしまいますが、
    都市にぽっかり浮かぶことで、
    意味も記号になってしまうようです。

    DSC02262.JPG

    DSC02268.JPG

    保存室(カナダ)
    膨大な数の古着が壁に吊り下げられています。
    壁が大きいので迫力があります。
    古着を、かつて着ていた人のメタファーと捉えると
    この壁面に保存された
    肢体を動かした力やその感情の総量が重くのしかかります。

    DSC02261.JPG

    黄昏
    床に置かれたたくさんの電球のうち、
    3つが毎日消えてゆきます。
    会期の初めは明るかったのでしょうが、
    終盤に近い今日は、ここまで暗くなっていて、
    最終日には真っ暗なのでしょう。
    全ての生命は、機能が一つ一つ働くなり、
    必ず終末を迎える。
    事実とはいえ、身も蓋もない話を
    アートでやってみたら、不思議な余韻が見えきます。

    DSC02264.JPG

    DSC02266.JPG

    黄金の海
    エマージェンシーブランケット(極薄素材の防風シート)
    で覆われた床は、確かに荒れた海のようです。
    さらに、電球が振り子のように大きく移動するので、
    反射光が複雑に変化し続けます。
    窓から眺める空間は、
    非日常という出来事を切り取って、ここに置いたようです。


    全体の印象をまとめるには無理があるのですが、
    日常の中で引っかかること、なぜか記憶に残ることや風景を、
    引っかかり、残ったエッセンスを蒸留し、
    光を当てて眺め直した感じです。
    ですから、作品の一つ一つが鑑賞の対象というより、
    自身の一部というか、自身の夢を見ているかのような、
    妖しい親和性がある。
    そんな印象でした。


    写真:筆者撮影







    20190826 鑑賞
    | 印象記 | 05:42 | comments(0) | trackbacks(0) | - |